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おっさんとジェントルマン

今日は、ほんとうに久しぶりに、往復着席通勤が出来た。

行きは、ほんとに、たまたま、前の席の人が途中駅で降りたから。
帰りは、すこし寄り道をしたので、始発に乗れたから。



しかし、行きの電車、隣に座った相手が悪かった。
僕が座るや否や、いきなり咳払い。
肩が触れると、身をくねらせ始めた。

うわ、失敗した。変なおっさんの隣だ。

小心者の僕は、肩をすくめ、なるべく動かないようにしていた。
でも、電車は電車。右に左に揺れる。加速、減速もする。僕の身体がおっさんのほうに傾き、おっさんに圧力がかかる。
すると、そのおっさん、また身をくねらせ、咳払い。
いや、そんなつもりではないんです。本当なんです。

もしかして、前に座っていた人、途中で降りたんじゃなくて、おっさんから逃げたのでは? ぼくは、第2の犠牲者?
でも、せっかく座れた椅子だ。ここで負けては、この電車はおっさんの天下となる。そんなわけにはいかないのだ。


まずは敵を知ることから。
ちらりと横目でお顔を拝見。
うん、標準的なおっさん。堅物そうな50代。
銀縁メガネが、汚れ気味だ。
会社で偉そうにしているわりには、ちっとも昇進しないタイプだな。
定年までに課長になれればもうけもの、そんなところか。

よし、すこし、心に余裕が出来た。僕のほうが、すこしは前途有望のようである。

おっさんが、また、身をくねらせた。僕はそのすきを狙って、屈めていた背を伸ばし、背もたれに密着した。胸を張る。肩幅が広がる。さあ、もう僕は動かないぞ。来い、おっさん!

おっさんの咳払いに、落ち着きがなくなっていくように感じた。
僕は、周りを見る余裕が出来た。
僕の周囲に立っている人間は、おっさんに対し白い目を向けているようにも見えた。
よし、勝った。少なくとも、僕の中では、勝った。

おっさんは、僕が降りるひとつ前の駅で降り、辺りに、そして僕の心に、静寂が訪れた。
勝利万歳!



帰りの電車は、始発駅スタートだ。座席の選択権もある。
だいたい、皆さんひとつおきに座っているので、僕は迷わず、小柄な女性の隣を選択した。
べつに、変なことをする目的ではない。


大抵の場合、女性のほうが男性よりも小柄である。
そうすると、朝のような、自分の領域を確保するための戦争を避けるためには、できるだけ小柄な女性が隣のほうが良いのだ。
もちろん、女性にとっては迷惑千万であることは重々承知だ。だから、こちらもジェントルマンでなければならない。

僕は、鞄から本を取り出し、ページをめくった。
いつも帰りの電車で読んでいる本だ。もちろん、ジェントルマン演じるために必要なアイテムでもある。
いやいやいやいや違う違う、僕はジェントルマンである。

女性は、こっくりこっくりと、船を漕ぎ始めた。
僕の肩に頭があたり、我に返る。
でも、数分後、また、こっくりこっくりと、船漕ぎを始める。
また、僕の肩にあたまがこつり。我に返る。
こんなことを数回繰り返していた。

相手が男だと、いらいらする状況だが、小柄な女性である。
そのうち、女性は諦めたのか、僕の肩に頭を乗せ、本格的に寝始めた。
起こすなんて、そんな無粋なことはしない。僕はジェントルマンだから。

・・・。
僕は、彼女とふたりで、はじめて電車で旅行に行ったときのことを思い出した。
帰り道、彼女は疲れて、今と同じように、僕の肩で寝ていた。
起こすのも申し訳なく、僕は固まっているしかなかった。



・・・。
そういえば、僕はまだ風邪を引いていたのだ。
鼻水が、つつつーっと出そうになる。
そっと、すする。
鞄の中にはティッシュがある。
でも、ぼくは本を持っており、しかもジェントルマンなので、動けない。
仕方がないので、また、鼻をすする。

あああ、しまった。女性が起きてしまった!
鼻をすすったのが、どうも「やめてくれ」の合図に取られたらしい。
ああ、違うんだ。そんなつもりで鼻をすすったんじゃないんだ。
僕に言い訳をする機会を与えてくれないか? 分かってほしいんだ。
そう言いたいのだが、言えない。ジェントルマンだから。

本を閉じ、ティッシュを出し、豪快に鼻をかむ。ずびびび~っ。
あ~すっきり。
女性は、そのうち降りてしまった。

早く風邪を治そう、というお話でした。
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テーマ : 今日の出来事
ジャンル : 心と身体

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非公開コメント

今晩は、ストラグラーさん。
面白い話しですね、吸い込まれました。
おっさんは腹立ちますねぇ。
僕なら我慢出来ずにガツンと肘でも入れますけど。
女性はいいですねぇ、僕は電車に乗る機会が無いので憧れますよ。

このご時世、咳をしていると避けられますね~
通勤電車では、敵を見極めるのが必勝の手ですね!

返信

>セスさん
肘、出来れば入れたいところですが、毎日ほぼ同じ時間帯に乗る電車なので、乗れなくなるのも困るんで、我慢しています。
顔見知り(といっても、ほんとうに顔だけで、名前も声も知らないのですが)も何人かいますし。
電車は、忍耐力つきますよ。オススメはしませんが。

>らいりさん
敵を見分ける前に、まず座りたい。悲しきサラリーマンです。
女性にも敵がいますね。突然化粧が始まることがありますから。
アイライン入れているときに、ちょん、と肘で小突いたらどうなるんだろう・・・。
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