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ばあちゃんの葬式

少し前、ばあちゃんが亡くなった。
葬儀のため、田舎に帰った。

ばあちゃんの住んでいるところは、畑や林の続く丘陵地の真ん中にある、小さなお寺の前の小さな集落のはずれにある、古い農家。
築70年の母屋と、もとは養蚕場として使っていた離れがある、わりと大きな農家。
ずいぶん昔に亡くなったけれど、じいちゃんがいた頃は、トラクター小屋に、豚小屋に、鶏小屋もあった。
隣の竹林からは、春に美味しいタケノコが採れた。
裏の林からは、夏にたくさんのカブトムシ、クワガタムシが採れた。
少し離れたところにある果樹園に行けば、無数のセミの成虫、幼虫がいて、子供の頃の僕にとって、そこは天国だった。

8畳の部屋が、襖を挟んで2つ並んでいる。
襖を取り払い、祭壇を組む。
葬儀場なんてなかった頃から続く、昔ながらの葬儀。

ばあちゃんの家に着いたとき、ばあちゃんが収まっている棺の傍らで、地区の人が集まって、図面を見ながら祭壇を組み上げていた。
僕もさっそく手伝いにかかる。
部屋のまわりには、黒白の幕が引かれていた。
花屋、果物屋が次々とやってきて、手際良く並べられていった。
ばあちゃんの棺を所定の位置にセットし、みんなでひと息ついた。
ようやく、ばあちゃんの顔を見ることが出来た。
「こんにちは。2年ぶりだね。遅くなってごめん。」

地区の人が総出で手伝いをしてくれていた。
葬儀当日の受付も、地区の人がやってくれる。
昔から、そうやって助け合ってきている。
じいちゃんのときも、ひいじいちゃんのときも、おじちゃんのときも、ひいばあちゃんのときも、同じだった。

お通夜。
親戚中がわいわいがやがや集まって、わりとにぎやかに始まる。
地区のいちばん高いところにあるお寺の坊さんがやってきて、取り仕切る。
いつものことながら、話が長い。まあ仕方がないか。
子供がきゃっきゃっと駆け回る。
食事をふるまう。
挨拶をしたりされたりしながら、時間が経っていく。

21時を過ぎて、みんな帰っていった。
僕は手伝いをすると言って、家に残った。
インスタントコーヒーをいれ、棺ところに持って行き、窓を開けて、ばあちゃんの顔を眺めながら、コーヒーを飲んだ。
ばあちゃんは、ぐっすりと眠っている。
ばあちゃん、にぎやかだね。
ようやく、少しだけ、泣くことができた。

喪主のおばちゃんと、その娘(僕のいとこ)と一緒に、香典の集計をする。
香典帳に、名前と額をすべて記入する。
午前2時。ああ疲れた。
ばあちゃんの棺の前に布団を敷いて、みんなで寝た。

翌朝、5時起床。
8時から、葬儀。
葬儀の途中から、雷鳴。
ほどなく、土砂降り。豪雨。
一体誰が迎えに来たのだろう。閻魔大王じきじきか。
足が痺れ、つま先からくるぶしにかけて感覚がないまま、必死に焼香。
そして、葬儀終了。タイミングよく、雨が止む。
身内の男衆で棺を担ぎ、庭を回ってから、霊柩車に乗せ、火葬場に向かった。
数時間後、骨になったばあちゃんが出てきた。

その1週間前、ばあちゃんは、くも膜下出血で倒れた。
緊急手術で開頭し、破裂した動脈を小さなプラチナ製クリップで止めた。
でも、結局、最後まで意識は戻らなかった。

骨だけになったばあちゃんの頭蓋骨のあたり、プラチナクリップがないか、探してみた。
「小さいから、わからないよ」と、看護師をやっているいとこが教えてくれた。
少し、見たかったなあ。

夕方、薄日が差しはじめるなか、みんなで墓まで歩いて、納骨。
墓の中には、骨壷がずらりと並んでいる。
「付箋紙貼っておかないと、どれがだれだか分からない」と、おばちゃんが笑った。
いろんな人に先立たれ、それでも頑張ってきたばあちゃんは、ようやくみんなと一緒になれた。
たくさんの骨壷を見ながら、そう思った。

こうやってばあちゃんは、鬼籍に入った。
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